本当の課外授業から学べること



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“じゃあ、まず授業のはじめに、みんなに絵を描いてもらいたいと思います。いままでの自分の人生で一番思い出に残っている植物の絵です。はい、スタート!”

秋の風がススキの穂をゆらゆら揺らす季節は運動会の季節でもある。そんな十月のとある日におれは自分の母校である川西北小学校5年2組の教壇に立っていた。課題の絵を描き始め、子供たちをNHKのカメラが追う。テレビ番組の企画での授業ということもあり、オトナの都合で植物を学ばなければならなくなった子供たちに、せめて授業のはじめに絵を描くことでまずは“そういう気分になってもらう”ための作戦だった。

おれもみんなと同じように、あの日の体験を思い出して描いた。植物にまだ“モノゴコロ”ついてなかった21歳のころのおれはというと、ボルネオ島に滞在中、東南アジアで一番高いというキナバル山の登山の最中で、世界一大きな食虫植物・ネペンテス・ラジャを目の当たりにし、そのグロテスクで妖淫で、圧倒的な存在感を放つそのウツボカズラに稲妻に打たれたような衝撃を受け、目が覚めた。そのときの極端な体験がきっかけになり、植物に“モノゴコロ”ついて、いまのおれの“植物LOVE!”の原点になったのだと思う。それからというもの、どんな植物にも目を配るようになったり思いやるようになったふしがある。 

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そもそもおれは植物をやるうえで大きなコンプレックスを持っているほうである。 常日頃から”植物ほどおもしろいものはない”と人前で声を大にして言い放ち、ひとりでも多くの人にそれを知ってもらうきっかけになるようにと”そら植物園”の活動を始め、とめどなく湧き出る自分の エネルギーをそれに注ぎ、結果を出して日々を謳歌しているにもかかわらず、その一方で、 そんなとめどないエネルギーやモチベーションが、自分のなかにひそむコンプレックスから来ている部分もあるのではないか、と最近よく自己分析するようになった。

ぶっちゃけて言ってみると、おれの深層心理のなかにある大きなコンプレックスは、世間では動物よりも植物の方が人気がないのではないか、そう心の奥底で感じているということなのだ。

たとえば、世の中を見てみると、どうしても植物園より動物園のほうが人気があるような気がするし、テレビでも動物番組はゴールデンタイムに放映される一方、植物の番組はどちらかというとマイナーなイメージがある。また、子供たちにそれらの魅力を語るとき、動物は問答無用で彼らの興味を圧倒的に引く一方、植物はなかなかむずかしかったりする。

植物をいかにおもしろく魅力的に語れるか?というテーマはおれだけでなく、植物をやっている人にとってはだれでも永遠のテーマではないだろうか。テレビ番組でうまく魅力を伝えることができれば、手っ取り早くもっともっと植物を好きになってくれる子供も増えるだろう。逆に、”子供たちは正直だから、植物をつまんないと思わせたらそれはおれの責任だ”

 さて。授業は進んでいき、おれの予想したとおり、みんな自分と身近な植物との思い出を、絵とともに発表してくれたところで、今度は教室から、多目的室へみんなを誘導した。次なる作戦は、事前にないしょで大量の変な植物を多目的室に持ち込み、ジャングルにしていたのだ。まずは変な植物を見せることでシンプルにおもしろいと感じて興味を持ってほしい。きっとみんなもおれと同じ。そこからなにかが始まるはずだから

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そのサプライズジャングルの効果は絶大だった。異国からやってきた不可思議な植物たちに大興奮し、絶叫し、目を輝かせ、首ったけになっていた。食虫植物に至っては、用意していたダンゴムシなんかを食べさせるとみんなのテンションはMAXに。子供たちにとって人生で初めて目にした異国情緒あふれる植物たちは、きっとおれがあのとき雲の上で出会ったネペンテス・ラジャのように写ったのだろう。その後も植え替えや植樹などを実際にやってもらったり、体験型の授業は2日間にわたって続いた。

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おれは常日頃から人前で植物のことについて語るとき、絶対に“植物を大切にしましょう、自然を守りましょう”とだけは言わないようにあえて心がけている。なぜなら、本当に草木たちを守ろうとするならば、説教じみたことを説くことよりも、まずはシンプルに好きになることが一番近道だと思っているからだ。

植物を枯らさず植え替えるという作業では、まず植え替え方を教えずにわざと枯らしてもらった。 自分の手で目の前の花を枯らすことがすばらしい経験になると思ったから。

植物を自分の意思をもってその手で殺したこともないやつに、本当に自然保護を唱える権利があるのか?という持論もしかり、できれば、植物はこんなにひとの手でどうにでもなるということを実感してほしかったのだ。 いまの植物に従事しているひとの教え方は20年遅れていると思う。枯らさないように人に教えるから、枯らしても反省しなくなるのになぁと思っている。

どろんこになって迎えた最後の授業を終えて、ついに子供たちに聞いてみた。

“みんな植物っておもしろいか?”

“めちゃめちゃおもしろい! もっと植物と遊びたい!!”

子供たちはその興奮を抑えることができず、ずっとおれのそばから離れないでいた。

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子供たちが興奮冷めやらぬなか、校庭にて、最後の挨拶を終えて授業と収録が終わった。

と思った瞬間、子供たちが一斉にドー とおれのほうに向かって走ってきた。まだまだ遊び足りないみんなは興奮を抑えることができず、その子供たちの勢いがおれに抱きつこうとしてるのかはたまたプロレスごっこの続きなのかわからないけど、その40人の子供が走ってくる勢いにビビり、どうしていいかわからず、なぜか気が付いたら校庭に向かっておれは全速力で走って逃げていた。

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 夢中で子供たちに追いかけられながら ”通じた! 植物ってやっぱおもしろい、こんなに喜んでくれた。おれの考えは間違っていたなかった”と、思ったら、安堵と充実感に包まれて、うれしくてうれしくて走りながら声をあげて泣いた。

*       *          *

母校での夢のような体験を終えてから2か月後、今日、また小学校へむかった。

じつはおれも担任の先生も校長先生も、番組ではひとつのクラスしか取り上げれないルールがあり、テレビで映らなかったもう片方のクラスがあまりにもかわいそうで、なにかできないかということで、学校側と話をして5年1組の記念樹も植えることにしたのだ。

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そしたら、なんと最後に5年生が2クラス合同でおれのために音楽会を開いてくれた。

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これ以上は、書いていると涙が止まらなくなりそうなので書くのはやめときます。

ブログを書くのにこんなに時間を使ったことは初めてで、しかもあったことや感じたことをすべて書きたいのに全然かけてない。気持ちで書いたから、おさまりの悪い文章だったけれどもそこは大目にみてほしいと思う

番組で映ったことはほんの一部だけれど、そんなきっかけでこんな貴重な経験をさせてもらって制作者さんとNHKさんには 本当に感謝している。 まさに人生レベルの経験でした。 あと、担任の福島先生は、すばらしい教師やなあと思った。感動した。 がんばってほしいと思う。

(ちなみにまもなくして今回のようそこ先輩は、NHKワールドでアメリカとヨーロッパで放送されることが決まった。)